SPECIAL GUESTS
第3回 鉄の造形作家:大河原良子さん

お正月も過ぎて、春の待ち遠しい今日この頃ですが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか? 今回のお客様は、鉄の女・・じゃないや、鉄の造形作家、大河原良子さんです。大河原氏とは大学院で美術のお勉強に共に勤しんだお友だち(ホントか?)。彼女の展覧会なんぞには時々出かけて、作品はしょっちゅう見ているのだけど、実際に会うのは久しぶり。(2002年1月)

いなだ:やっほ。久しぶりですねー。

大河原:ホント久しぶりですね。何年ぶりだろう? 赤長さん(恩師、赤坂先生)のお葬式以来かな?

いなだ:それっていったい何年前だっけ? ところで、大河原さんは何で“鉄” なの? 最初に「私は“鉄”よ」と思ったきっかけとかあるんでしょうか?

大河原:大学に入ったのも、最初から金属がやりたくて入ったんだけど、鉄が性に合ってるのかなー。ときどき銅とかでチマチマしたりするのも嫌いじゃないんだけど、肉体労働したくなると、やっぱり“鉄”なのよね。それに、火、好きだし。

キャンドルスタンド キャンドルスタンド ライト
キャンドルスタンド

いなだ:火が好き! こりゃ困った(笑)。大河原の作品って、キャンドルスタンドとか、ランプとか、灯り関係だよね。やっぱり火が好きだから?

大河原:素材に無理させたくないから。鉄は火と相性がよくて、水気を嫌うでしょう。それに、他の素材や工業製品として簡単につくれるものを、わざわざ苦労して人力でつくるのには、きちんとした意味がないと自己満足だと思うから。

いなだ:なるほどねー。キャンドルスタンドの形とか、うねうねした有機的な曲線が特徴だと思うんだけど、これには何かわけが?

大河原:植物が好きだから・・。特に暑いところの植物。なんでこんなになっちゃってるんだろうってかたちをしてるでしょう? 食虫植物とかね。2、3年前の作品はネペンテスとかサラセニアがモチーフになってます。

いなだ:実際にろうそくつけた時の影がきれいだよねー。影の出方も計算して作るのかなぁ?

大河原:ある程度予測はしてるけど、完全に計算しているわけじゃなくて・・。できたときのお楽しみってところもあるね。

いなだ:これ、どうやって作るの?

大河原:鉄の棒や板を熱してたたいて曲げて溶接する。コークス炉は八王子にあるんだけど、小さい物はガス溶接のトーチ(吹管)赤めて・・。

いなだ:赤めるって?

大河原:熱を加えると赤くなるでしょ? それを“赤める”って言うんだけど、これって業界用語かな?

いなだ:いや、確かに「顔を赤める」とか言うね。でも、なんか違うような気がするけど・・。まぁ、いいや。学生の頃と今では、少し作風が変わった?

学生時代の作品 学生時代の作品 学生時代の作品

大河原:そりゃー設備が変われば作る物も変わるよ。それに、青臭いこと考えなくなった。身の程知らずのコンセプトは背負い込まないことにしたし。学生の頃は何か“背負い込んでる”って感じだったでしょ? そういうものがなくなった。

いなだ:そういえば、背負い込んでたかもね。私はなーんも考えてなかったけど(笑)。大河原さんはドローイングの作品もあるんだよね。ドローイングはいつ頃から?

大河原:98年に目黒区美術館で「ブラック&ホワイト」という展覧会があって、モノトーンの作品や素材ばかりを展示してあったんだけど、墨の色見本を見たんだよね。そしたら それがあまりにもきれいで。

いなだ:じゃあ、この色材は墨なんだ。墨っていろんな色があるんだねー! ドローイングと立体作品と、何か関連はあるの? 一見、まったく違うものに見えるけど。

大河原:特別関連があるわけじゃないけど、お互いに刺激し合ってくれるといいなと・・。私って、いつも“素材”から入るんだよねー。いいことなのか、悪いことなのかわかんないけど。

ドローイングの作品 ドローイングの作品 ドローイングの作品
ドローイングの作品

いなだ:作品作るとき、いつもどんなことに苦労する?

大河原:何を作るか決まらない時!

いなだ:最近、はまっていることとかは?

大河原:メセン。

いなだ:何? メセンって。

大河原:漢字で書くと“女仙”って書くらしいんだけど、アフリカのサボテンみたいな植物。大臼歯みたいかたちのが、パカッと割れて“脱皮”したり、そっから花がでてきたりするのよね。今、6種類持ってる。けっこうエッチな感じだよ。

いなだ:植物って、みんなエッチだぜー。私もけっこうかぶりつきで花、撮らせてもらったけど、こっちが恥ずかしくなっちゃうくらいね。で、これからやってみたいことは?

大河原:またドローイングの個展をやりたいな。

いなだ:いなだに何か言っておきたいことは(笑)。

大河原:お互いに、若くないんだから体には気を付けようね。久しぶりに会った人には驚かれるんだけど、長いつきあいのタバコとはようやく縁を切ったよ。

いなだ:そりゃすげー。私は禁煙しないぞー! そうだ、今度私にも鉄、たたかせてくれ~。

大河原良子PROFILE
ライト
1987年 多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻クラフトデザイン専修 (現工芸学科)金属コース 卒業
1989年 多摩美術大学大学院美術研究科 修了
1993年 八王子に工房を設立 現在に至る
Studio Sturgeon Studio Sturgeon
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